物理現象は,ある物理量の時間的な変化によって生じ,これを表現するにはその物理量の導関数が重要です.特に\[\frac{dx}{dt}=kx\]のように,未知の関数の導関数が含まれる方程式を微分方程式といい,微分方程式の解として未知の関数を求めることができます.我々が手で解きうる微分方程式の解法としては,次の4種類があげられますが,普通はコンピュータを用いた数値的な解析によることになります.
(1)一階線形同次微分方程式
微分方程式のうち\[\frac{dx}{dt}+p(t)x=0\]と表せるものを,一階線形同次微分方程式といいます.これを解くために,まず変数を\(x\)と\(t\)で分離することを考えます.すなわち\[\frac{1}{x}dx=-p(t)dt\]というように,左辺と右辺で変数を分離すると,それぞれで\[\int \frac{1}{x}dx=-\int p(t)dt+C\qquad ∴\log x=-\int p(t)dt+C \qquad (Cは積分定数)\]と積分することができ,これより\[x=Cε^{-\int p(t)dt} \qquad (Cは積分定数)\]として,未知の関数\(x\)を求めることができます.いま得られた解には積分定数が含まれ,その定数分の未定性があります.これを特に一般解といいます.そして,一般解を確定させるには,初期条件より積分定数を定めることが必要で,こうして得られた解は特殊解といいます.すなわち,一般解は無数の特殊解の集合を表していると考えられます.
(2)一階線形非同次微分方程式
微分方程式のうち\[\frac{dx}{dt}+p(t)x=q(t)\]と表せるものを,二階線形非同次微分方程式といいます.これを解くために,まず同次式の一般解\[x=Cε^{-\int p(t)dt} \qquad (Cは積分定数)\]を求めます.次に,積分定数\(C\)を\(t\)の関数\(C(t)\)と考え与式に代入すると\[\frac{d}{dt}(C(t)ε^{-\int p(t)dt})+p(t)C(t)ε^{-\int p(t)dt}=q(t) \qquad \frac{d}{dt}C(t)=q(t)ε^{\int p(t)dt} \qquad C(t)=\int q(t)ε^{\int p(t)dt}dt+C’(C’は積分定数)\]として\(C(t)\)を求めることができる.よって,同次式の一般解に代入すれば\[x=\{\int q(t)ε^{\int p(t)dt}dt+C’\}ε^{-\int p(t)dt} (C’は積分定数)\]として未知の関数\(x\)を求めることができます.
(3)二階線形同次微分方程式
微分方程式のうち\[\frac{d^2x}{dt^2}+2γ\frac{dx}{dt}+ω^2=0\]と表せるものを,二階線形同次微分方程式といいます.これを解くために,まず解を\[x=ε^λt\]とおき,これを与式に代入すれば\[λ^2+2γλ+ω^2=0\]を得ます.これを特性方程式といい,この方程式の解に応じて次のように与式の解が分類されます.なお,\(C_1,C_2\)を積分定数とします.
① \(γ>ω\)のとき(実数解\(λ=a_1,a_2\)をもつとき)
\[x=C_1ε^{a_1t}+C_2ε^{a_2t}\]
② \(γ=ω\)のとき(重解\(λ=b\)をもつとき)
\[x=(C_1+C_2t)ε^bt\]
③\(γ<ω\)のとき(虚数解\(λ=c+jd\)をもつとき)
\[x=C_1ε^{ct}\sin dt+C_2ε^{ct}\cos dt\]
(4)二階線形非同次微分方程式
微分方程式のうち\[\frac{d^2x}{dt^2}+2γ\frac{dx}{dt}+ω^2=r(t)\]と表せるものを,二階線形非同次微分方程式といいます.この一般解は\[x=二階同次式の一般解+二階非同次式の特殊解\]となります.